5. 補足

 

 14では、IRTの基礎、基本的な2値反応モデルである123母数モデルを紹介してきました。この他にも、多値(polytomous)反応モデルを分析できるモデル、多次元モデルなどがあります。また、各母数を推定する方法などもあります。さらに、項目母数の推定に伴い、標準誤差やテスト情報量といった重要なものもあります。ここでは、基本的なモデル以外のモデル、母数推定する方法、母数推定ができるソフトウェア、そして、参考にできる文献(ここでも参考にしています)を名称のみ紹介したいと思います。

 

 

多値IRTモデルと多次元IRTモデル

 

多値IRTモデル

     段階反応モデル(Graded Response Model, GRM: Samejima, 1969)

     連続反応モデル(Continuous Response Model, CRM: Samejima, 1973)

     名義反応モデル(Nominal Response Model, NRM: Bock, 1972)

     評定尺度モデル(Rating Scale Model, RSM: Andrich, 1972)

     部分採点モデル(Partial Credit Model, PCM: Masters, 1982 )

     一般化部分採点モデル(Generalized Partial Credit Model, GPCM: Muraki, 1992)

 

モデルの構造上段階反応モデル、名義反応モデルの2通りに分類されます。上から2つは段階反応モデル系、その他は名義尺度モデル系です。また、NRM以外はカテゴリが順序尺度となっています。NRMは多肢選択式問題で正答以外の選択肢の情報も重要でモデルに反映しようとしたモデルで、カテゴリは名義尺度となっています。

 

多次元IRTモデル

 上までのIRTモデルは、テストが単一の潜在特性値を測定しているという仮定を元に構成されていました。しかし、潜在特性値は単一ではなく、複数であると考えることができます。例えば、数学の能力でも計算力、図形解釈力、文章読解力などを必要とします。このように、潜在特性値を多次元としたモデルが多次元IRTモデルです。

 

 

 

母数推定の方法

 

 母数推定には様々な方法があります。ここでは、一般的に利用される母数推定法を示していきます。

     最尤度推定法(Maximum Likelihood Estimation, MLE)

     同時最尤度推定法(Joint Maximum Likelihood Estimation, JMLE)

     条件付最尤度推定法(Conditional Maximum Likelihood Estimation, CMLE)

     周辺最尤度推定法(Marginal Maximum Likelihood Estimation, MMLE)

     ベイズ推定法(Basian Estimation)

     マルコフ連鎖モンテカルロ法による推定法(Markov Chain Monte Carlo, MCMC) など

 

 

 

母数推定ができるソフトウェア

 

 母数推定ができるソフトウェアもたくさんありますが、ここでは利用したことがあるものを示します。

     BILOG-MG3.0(Zimowski, M., Muraki, E., Mislevy, R.J.& Bock, R.D., 2003) Scientific Software International.

     PARSCALE4.1(Muraki, E.& Bock, R.D., 2003) Scientific Software International.

RESGEN Item Response Generator Version4.0(Muraki, E.2000)

 

BILOG-MGはかなり一般的に利用されているものです。2値データの123母数モデル、DIFなどが推定できます。PARSCALEは、GRMPCMGPCMの母数推定ができます。RESGENは、さまざまなモデルにおけるシミュレーションデータを生成できます。

 

 

 

参考文献

 

・高橋正視(2002). 項目反応理論〜新しい絶対評価〜.イデア出版.  古典的テスト理論からIRTまで、学習初期者にとても詳しく書かれています。

・豊田秀樹(2002). 項目反応理論[入門編]―テストと測定の科学―.朝倉書店.  入門書で上より若干難しいですが非常に参考になります。

・豊田秀樹(2004). 項目反応理論[理論編]―テストの数理―.朝倉書店.  理論編なので、上2つの入門書を読んでから読まれることを推奨します。日本語参考書の中ではバイブルと言えるのではないでしょうか。

 

 

一言

 

 ここでは、IRTの基本となる2IRTモデルを紹介しました。しかし、IRTの世界は広いのでまだ、様々なモデルや推定法などがあります。今後もそれらについて順次アップしていこうと思っていますのでよろしくお願いします。

 

 

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